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小浜をまもる風景 vol.5 『一般社団法人あんじょうしょう会』

国道27号線と小浜線に挟まれた畑から威勢の良い草刈り機の音が聞こえる。松永田の神祭りの御旅所となる立派な杉の木の前には、女子学生の姿。この遊休農地は今年生まれ変わるそうだ。ここは、松永。地域の野菜と住民が集まる水土里直売所の駐車場脇には目新しい展望台。農業に対する熱い思いが、このまちの風景をつくっていると聞いてやってきた。

お話を聞かせていただいた代表理事の西田さん(左から2番目)と、草刈隊の精鋭たち。

バトンをつなぐ松永

「今日は、福井県立若狭東高等学校から要望があって、遊休農地をひまわり畑に変えるための草刈りを学生と一緒にやっています」と、にこやかに話してくれたのは、小浜市農業委員会会長であり、株式会社永耕農産の監査役であり、一般社団法人あんじょうしょう会の代表理事と、いくつもの顔を持つ西田尚夫さん。
「学生と一緒に草刈りをするのは、松永で70歳、80歳になっても安心して自分のペースで働ける状況をつくるために設立したあんじょうしょう会のメンバー。みんな元々永耕農産で働いていた農業のプロばかり。週4日くらい北川沿いや遊休農地の草刈りをする通称“草刈り隊”。松永の各地で永耕農産などがすぐに農地利用できるよう準備をしています」
西田さんは当時会社員として勤めながら、2003年にはじまった松永地区の土地改良に携わった。そして、農業を中心とした事業で松永を次世代に残していくことを掲げる株式会社永耕農産の前身となる組織の立ち上げや、多面的機能支払交付金の対象団体として一般社団法人あんじょうしょう会を2017年に設立。
「地域は、バトンタッチできないと弱ってしまう。あんじょうしょう会は定年後の仕事確保だけではなく、若い人が松永に入りやすい状況をつくるために設立しました。ぼくらのできることは、常に未来のことを考えて次の人が乗りやすいレールを敷いてあげること。それが役目だし、自分たちの地域は自分たちで守らなくてはいけない」西田さんが見つめる先では、草刈り隊が学生に草刈り機の使い方を丁寧に教えていた。
「稲作は水が肝心。松永の米は池河内から流れる良い水のおかげでおいしいんや。これを機会に学生たちも興味を持ってくれると良いなあ」と語る西田さんの前には、松永が向かうべきレールのルートがしっかり見えているようだ。

草刈り機の説明に真剣に聞き入る学生たち。

農業がつくる風景

稲の育成状況を確認し、相談し合う永耕農産の岡本さんと山元さん。

「農業技術の習得に全力を注ぎ込めることは幸せ。農業が面白くてしょうがない」と口を揃えて語ってくれたのは、永耕農産の岡本竜平さんと山元藍さん。西田さんから、これからの松永を表現してほしい若手として紹介いただいた。
「今まで体力系から接客業、飲食業などさまざまな仕事を経験してきましたが、農業が一番面白い。作物は本当に素直なんです。手を抜いたらできないし、入れすぎると弱くなってしまう。それまでの仕事は同じことの繰り返しでも成り立っていたのに、農業は前年と同じことをやっても天候とかで全然違ってしまう。やってもやっても考えなくちゃいけないなんて、こんなに面白いことはないですよ」山元さんは京都府の出身。若い頃から自分の思いを叶えるために全国を転々とし、2018年から小浜で働いている。
「自営業で飲食店をやっていましたが、商業は個人で潰しても別に良いんです。でも、農業は違う。継承していかなければならない」水土里直売所横の展望台から眺めることができる『田んぼアート』は、山元さんも参加する「松永里山学校」が主催してつくられた。

キビキビと勢いのあるトラクター作業をする山元さん。


「ぼくの家は兼業農家でした。だから農業の現場が近くにあった。でも、今農業に触れる機会がぐっと減っている。普段当たり前に食べているものがどこでどうつくられるのか。誰がつくっているのか。そういうことが分からないまま大人になることは、危険だと思っています」そう語るのは、「松永里山学校」の代表も務める岡本さん。
「子育て環境ってとても大切だと思うんです。都市部に暮らしていた時、わざわざお金を払ってキャンプに行ったり、子どもたちが建物の影で携帯ゲームをしていたり、そういうのを見るのは悲しかった。自分が60歳とか80歳になった時、この地域がどうなっているかよく想像します。その時、この地域を残していくためには、みんなで田んぼのあぜでおにぎり食べたとか、松永の風景をつくる農業に関わる原体験をつくることが大切。だから『松永里山学校』を企画しています。教育って大切なんですよ。ずっとやっていきたい」

いつ伺っても清々しい笑顔と真摯な受け答えをしてくれる岡本さん。

松永の風景は農業がつくっている。自分の仕事と地域に誇りを持ち、情熱を注ぎ込むことは簡単なことではない。しかし、その行動が自分たちの未来や暮らしを明るくするという確信を持つことができたらどうだろう。松永には、そのお手本となる先輩たちがそばにいる。あんじょうしょう会と永耕農産、学生が一緒に風景づくりに取り組む姿は、まさに地域が目指す風景づくりのバトンタッチを表現していた。
ここに、小浜をまもる風景がある。

各世代でつくりあげている松永を象徴する風景。
農業はチームワークだ!

次回は、『太良庄荘園の里保全隊』。お楽しみに!

※:記事内の役職や肩書きは取材当時のものです。

小浜の風景をまもる人や活動を伝えるパブリックマガジン『小浜をまもる風景』は、小浜市内の各公民館または、小浜市役所2階の農政課前で配布しています。このWebバージョンとは違う写真も掲載しておりますので、是非お手にとってご覧ください。

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